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ついにラパロの日を迎えた。前日は、夜12時以降絶食、朝受診時間の2時間前から絶飲とのことで、少し早めの夕食を取り、10時のお茶を最後に朝を迎える。6時おきでシャワーを浴び、7時に夫とともに車で出発。

病院についたら7時半にDay Surgery Unit(日帰り手術ユニット)の受付をということであったので、少し早めに行ってみると、すでに4組ぐらいの方が待っていた。受付を済ませると、待つ間もなく、看護士さんが来られ、5人ぐらいの名前を呼び、まとめて中に入っていく。私も第1群で呼ばれたので従った。

夫とは、ここでお別れ。手術前の案内には、Day Surgery Unitには、家族の待機場所がない(病院正面の一般待合室しかない)ため、一旦自宅待機ということ。13時ごろに電話をいれ、お迎えの時間を確認するようにとのことであった。

通された先は、待合&リカバリー室。全部で20個ぐらいのセルがカーテンで仕切られてあり、一つ一つにストレッチャー(移動用ベッド)が設置されてある。私は、なぜかサイドルームという個室に通され、すぐに看護士さんが来て、体調の確認、血圧、問診などの確認の後、左手首に、名前を書かれたIDと、アレルギーを書いた紙を結びつけれれた。念のために、妊娠検査をすると尿検査あり。最後の期待を寄せたが、そのまま大どんでん返しの報告はなく、予定通りにことは進む。用意されてある薄い手術着に着替え、持ってきたドレッシングガウンを羽織る。私は、タオル地の分厚いガウンで本当に正解だった。一応ブランケットをもらえるのだが、ぺらぺらであまり暖かくないので、ガウンのない人や薄手に人は、かなり寒そうにしていた。

椅子に座って本を読んでいると、看護士さんが戻ってきて、ベッドを変わってほしいと言う。どうやらもっと‘upper'な人が来たらしい(笑)。初めから普通のベッドでよかったんだけどなと思いつつ移動。こちらの方が、周囲の様子が良く見えるので安心だったりする。

オペの前の心境というのは本当に複雑である。持参した本を読みながら、周囲の状況を伺っていたが、隣の人、前の人が次々に、ストレッチャーで連れて行かれ、1,2時間後、かなりやつれ果てた様子や、腕に大きな包帯を巻いて帰ってくる光景が続く。あまり気分の良いものではないな…と思っていると、麻酔科医が問診と挨拶に来られた。アレルギーや今までの手術歴、麻酔歴、口の中の状態などについて聞かれた。

それから待つこと、数時間。午前中4番目の手術ということで、帰るのはたぶん15時ごろと予め聞いていたので、ある程度の待ちは覚悟していた。結局、呼ばれたのは12時ごろ。私は、Day Surgery ではなく、メインの手術室で執刀してもらう予定だったので、枕を抱えて看護士さんと一緒に歩いて移動した。手術室で受け付けを済ませると、看護士の引継ぎが行われ手術室の脇にある麻酔室へ。

麻酔はコンサルタントの女性が担当してくれるとのこと。テキパキと有能そうな女医さんで、見学に入っていた医学生や救急隊員の人に、いろいろ説明をしながらの処置。まず、手の甲に点滴を取るが驚きの失敗!「おかしいわね。絶対入ったと思ったのに…。注射針のせいだと思うけど、よくわからないわ!」と、一応言い訳をしながら、刺しなおし。コンサルタントまで、自分のせいではないと言い訳するところが、イギリスらしいとつい思ってしまった(笑)。

次に吐き気止めの薬3種類を点滴ボトルに入れる。作用機序が違うので組み合わせるのが有効らしい。そしてボトルに入れるのは、直接入れると血管が痛いかららしい。

「さあ、運命の瞬間よ!」と白いぶっとい注射器を見せられる。ついに麻酔薬の登場である。

「日本のどこから来たの」
「○○です。」

「どのぐらいイギリスにいたの?」
「○年○ヶ月です。」

「イギリスと日本とどっちが好き?」
…10秒ほど沈黙…
「Both(両方)」
ここで、一同大爆笑!

2,3回咳が出る。頭がかすかにジンジンしてきた。注射薬の副作用だ。

「なんで、イギリスに来たの?」
「仕事と勉強…」

この質問を最後に意識なし。


寒い…究極に寒い…全身を硬直させガタガタと震えながら、ぼんやりと意識が戻ってきた。何でこんなに寒いんだ…、お腹の痛みに関わらず、寒さで震えが止まらない。

「ここはリカバリー室ですよ。」となりにいた看護師さんが声をかける。ああ、無事に終わったんだとまずは一安心。ゆっくりと左を見ると、お年寄りの男性が苦しそうに上半身をえびぞりにしてもがいている。どうやら、挿管チューブを抜く前に麻酔から覚醒してしまったらしい…。かなり苦しそうだ。

私は、すでに点滴以外のチューブは全て抜かれていたので、助かった。ずいぶん、寝ていたらしい。時計を見る14時半。ラパロは問題がなければ、40−50分で終わると聞いていたので、少し長い。癒着があったんだろうかと思っていると、「じゃあ、Day Surgery に帰りますね」とストレッチャーが動き始める。ガタガタと振動がつらい。朦朧とした中、時々フッと意識が遠のきながら廊下を運ばれていく。

次に気がつくと、Day Surgery の元の場所についた模様。頭上で3人の看護士がなにやら話をしている。ぼんやりと目を開ける。どうやらどうやってベッドに移動させるかの話らしい。「移動できるかしら?」と一人の看護士が意味深に床の方に目をやる。「…こっこれは、自力でベッドを移動しろってことか?!つっつらい…」と内心おののく。すかさず、他の2人の看護士が、「そんなの無理です。ボードを持ってきましょう。」と、移動用の硬いマットを持ってきて寝たまま移動させてくれた。やさしさが身にしみる。それにしても、いろいろな看護士さんがいるんだなあ…。とにかく寒くてガタガタと震えていると、ブランケットをさらに追加してかけてくれた。

ベッドでボーとしていると、本当はダメなんだけど…といいながら、迎えに来た夫を少しの時間通してくれる。2,3言、言葉を交わす。とてもナイスなティーと、ビスケットかパンはいかが?と言われ、ふとお腹が空いていることに気がつく。声を出す元気はなく、うんうんとうなずく。出てきたのは、なぜかとても薄いコーヒー。オペ直後にコーヒーが出るのは、さすがイギリス。日本ではまずお水からだろうなあ…(笑)。暖かな甘いコーヒーはとても美味しかった。ビスケットは、カラカラの喉につかえたが、お腹も落ちついてまた一眠り。お腹が張り引きつれたような痛みはあるが、痛み自体は、それほどでもない。しばらくすると点滴が終わっていたが、看護士さんが止めに来る気配がないので、血が逆流すると嫌なので、自分で勝手に止めた。そしてまた一眠り。

目が覚めると、やさしそうな看護士さんが「トイレに行ってみない?」と言う。尿が出たら帰れると聞いていたので、ベッドから降りてみる。足元がややおぼつかないが、すぐに感覚が戻ってくる。

廊下で、別の看護士さんから
「調子よさそうに見えるわよ!」と声をかけられる。
「ハスキーな声になったの」と反射的に冗談で返してしまう自分が怖い(笑)

初めてのトイレはさすがにつらかった。導尿していたせいか、刺すような痛みがある。膀胱が張っていて尿意があるにもかかわらず、ほとんど出てこない。いつもの10倍以上の時間をかけて搾り出す感じだ。フレッシュな血も混じっている。この出血は、オペ後しばらく続くそうだが、大量の出血でない限りは大丈夫だそうだ。

ベッドに戻ると、服を着替え帰りの準備。血圧のチェック。内服薬は、頓服の痛み止めと、1日3回1週間の痛み止め+消炎剤の2種類。明日の朝、体調確認の電話が入るそうだ。シャワーは調子がよければいつでも良いが、お風呂は2,3日はダメ。傷口はぬらさない。糸は吸収糸なので、抜糸は不要。とのことである。オペ後の受診は、2−6週間後とのことで、また病院から手紙が来るそうだ。

確認したところ、手術室に入っていたのは、12時15分から13時半の1時間15分。リカバリーで目が覚めたのが14時半、夫とともに帰宅したのが17時半。ずいぶんたくさん寝ていたなあ。


帰宅してからは、すぐにベッドへ。お腹が張っているせいか、少し上半身を起こしている方が楽である。それにしてもお腹が減った。塩っぽいものがほしい。喉もカラカラだ。というわけで、夫の反対を振り切りなんとチップスとスポーツドリンクを食べてしまった(笑)。これだけ、食欲があれば、大丈夫だなと我ながら恐るべし体力。

しばらくしてトイレに行き、初めてゆっくりと自分の身体をみて呆然。左の下腹部から脇腹、そけい部、陰部が見るも無残でいびつな形に腫れあがっている。しかも異様に硬い!傷口は、おへその下と、左右のビキニラインより少し上の2箇所、そして左のおへそ斜め下の計4箇所。そのうちの左のビキニライン上の傷口のガーゼから、血がしたたり落ちているではないか…! もしかして、腹腔内の出血が止まっていないのでは?!と急に心配になる。夫を大声で呼ぶ。大丈夫だろうか…?とりあえず、びしょびしょにぬれたガーゼの上に、ティッシューをおき横になってしばらく様子をみることにする。

その後、しばらくして出血は止まり、主に黄色い浸出液のみとなり一安心。炎症が強いのだろうか?結局、その夜は、5−6回ティッシューを取り替えた。翌朝にはそれも止まり、ガーゼは再び乾いていた。

手術当日の夜につらかったのは、トイレ。一度に少ししか出ないので、度々行きたくなる。しかも刺すように痛い。ベッドの上がり降りがとてもつらかった。お腹の痛みは、我慢できる程度で、結局痛み止めも使わず。そうして次の朝を迎えた。



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